1 医療事件を手がけたきっかけ

 私が医療事件を手がけるようになった大きなきっかけは、山崎豊子作の「白い巨塔」です。唐沢寿明主演の「白い巨塔」も欠かさず視てました。医療という素人には近づき難い大きな専門性の壁と、大学病院という巨人に立ち向かう患者側弁護士の姿がとても格好いいと思いました。ということで、けっこうきっかけはミーハー的で、それ以上の動機はありません。また、家族や友人が医療事故に巻き込まれたということも現時点ではありません。

2 患者は正義、病院は悪か?

 もっとも、私は「患者が正義で病院は悪」というような、偏った思想は持っておりません。医療は社会にとって不可欠です。私は弁護士はいなくなっても社会は困らないが医者がいなくなるとみんな困ると思っています(笑)。したがって、私は、責任を負うべき医師、医療機関にはちゃんと責任追及すべきであるが、徒に濫訴して医療崩壊の原因になるような活動には与したくはないと思っています。

 唐沢寿昭演じる「財前五郎」は、弁護士と論争になった際に、次のように言い放ちました。

 「医者は殺した患者の数で成長する」

 この台詞、なんだか恐いですよね。でも、残念ですが一面では真理だと思います。どんな名医も新米の医師から出発します。生まれながらの名医など存在しない。ましてや神様ではなく人間ですから、過ちを犯してしまう…。したがって、財前五郎の言葉は真理なんです。挑戦と失敗を繰り返して人間は成長していく。そうだとすると、医者も同じです。

 ただ、そうだとしても、過失で患者さんを死なせた医者が何らの責任も負わなくてよいというのも暴論だと思います。責任を取った上で、それを乗り越えて成長していただきたいと思います。ここで大事なことは、その責任は医者としての生命を奪ってしまうような過酷な責任を課すのは社会にとって大きな損失になるということです。かけがえのない家族をうしなった遺族の保護を十分図った上で、医者に対する責任追及も過度に過酷にならないような社会的仕組みが必要だと思います。