ファロー四徴症
                             弁護士 藤田大輔
1 定義
  ファロー四徴症とは,肺動脈狭窄,高位心室中隔欠損,大動脈の右方転位(大動脈騎乗)および右心室肥大の四病変を伴う先天性心疾患である。


2 症状
  新生児期以降よりチアノーゼが見られる。チアノーゼとは,酸素化の不十分な血液が流れるために皮膚や唇が青紫色になる現象である。はじめは啼泣時や運動時に限ってみられるが,次第に安静時にもみられるようになってくる。
  特徴的な所見として蹲踞や,太鼓バチ指などがみられる。
  チアノーゼが高度になると酸素化を良くしようとして赤血球数が増加するため血液の粘調度が増し,血栓症をきたすことがある。


3 確定診断
  心臓超音波検査において①PS(肺動脈狭窄),②VSD(心室中隔欠損症),③大動脈騎乗,④右室肥大を確認することができる。

4 治療
  一期的に根治手術,もしくは二期的に姑息手術の後で根治手術を行う。
(1)姑息手術
   人工血管を用いて鎖骨下動脈と肺動脈との間に短絡を作成するブラロック・トウシック手術や大動脈と肺動脈との間に短絡を作成するセントラルシャントなどがある。いずれも肺血流を増加させてチアノーゼを改善させるとともに,肺動脈や心室の発育を促すことによって,根治手術を可能とするために行われる。
(2)根治手術
   人工心肺装置を用いて心停止下に心室中隔欠損の閉鎖と,肺動脈狭窄の解除を行う。


5 裁判例

東京地判平成13年7月5日

【事案】
ファロー四徴症の患者(0歳・女)に対する姑息手術中に動脈管が閉鎖し、患者が低酸素血症に陥って死亡した事故につき、術前予防的にパルクスの点滴静注を行い、更には手術中の動脈管閉鎖に備えて体外式心肺補助装置を用いるか、いつでも迅速に体外式心肺補助装置を用いることができる準備を整えて手術に臨むべきかどうかが争われた。

【判旨】
Y病院の担当医師には本件手術による刺激ないしストレスによりXの動脈管が完全閉鎖されることを予見して,このような動脈管閉鎖を防ぐため,術前予防的にパルクスの点滴静注を行い,更には,手術中における動脈管閉鎖などの危険に備えて手術開始当初から体外式心肺補助装置を用いるか,あるいはいつでも迅速に体外式心肺補助装置を用いることができる準備をして手術に臨むべきであったにもかかわらず,かかる装置をとることを怠ったものであり、その結果として,本件第2回挿管後に動脈管閉鎖が生じたないしは動脈管閉鎖に対して適切な対応をとることができず,Xを死亡に至らしめたものであるから,過失があると認められる。


6 最後に
  本件のような心臓の外科手術は、最近の医療技術の進歩によりかなり成功例も多くなりつつあるといわれている。かなり困難なものであるが,本件はファロー四徴症の患者に対する心臓外科手術を行った医師の過失責任が認められた一事例であり,実務上参考になる裁判例である。
                                   以 上