1 導入

 医療の現場では何をなすかは医師の裁量という慣行が幅をきかせており、医学は医療行為の危険性から目をそむけ、有効性に過度に目を向けてきた。
 もっとも、医療事故の一部は不可抗力的事故ではあるものの、残部は医療機関に法的責任のある医療過誤といえる。医療過誤は、患者側が認識しない場合もあり、認識できても紛争化しない場合もある。その一部は医事紛争に至り、そのまた一部が訴訟に発展する。
 上述のように医学はその有効性ばかりに目を向けてきたこと、また、医療の何を事故と考え、どう定義するかが未だにはっきりしていないことから日本全体の医療事故の統計はあまりない。
 そこで、以下では訴訟に発展したケースのみを取り上げて、その統計を紹介する。

2 統計①

(1)医療関係訴訟事件の終局区分別既済件数

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(2)地裁民事第一審通常訴訟事件・医事関係訴訟事件の認容率

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(3)まとめ

 この2つの表から読み取れることは、①和解率が約50%であること②判決においては、認容判決は棄却または却下判決よりも少ないことである。
 なお、和解の内容は公表されていないが、認容に近い原告勝訴的和解がやや多いとの指摘がある。
 したがって、一審での原告勝訴率は和解も含めると、50%前後ではないかと考えられている。

3 統計②

(1)平成23年度 第一審通常訴訟既済事件数(審理期間別)

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(2)平成23年度 第一審通常訴訟既済事件数(弁護士選任状況別)

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(3)まとめ

 この2つの表から読み取れることは、①審理期間においては、通常訴訟は6月以内で終わる事件が一番多いが、医療過誤訴訟は二年以内、三年以内かかる事件が一番多いこと、②弁護士選任状況においては、通常訴訟は三分の一くらいしか弁護士が選任されていないが、医療過誤訴訟ではほとんどの事件で弁護士が選任されていることが分かる。
 したがって、医療過誤訴訟は通常訴訟に比べると長くつらい戦いであり、専門の弁護士に任せることが有意義なことであると考えられる。

以 上