1 医療調査とは

 責任追及手続(訴訟や示談交渉など)をとる前提として、医療機関の法的責任を判定するための独立の手続を経ることが必要となるところ、そのための一連の手続をいう。

2 医療調査の目的

 医療過誤事件は、他の一般民事事件と違い、相談者自らが事実認定のための証拠を有していたり、自らこれを収集してくることは少ない。
 また、医療過誤に該当するかどうかの判断は、弁護士が有している法律知識や常識のみでは不可能であり、一定の医学的知見が不可欠である。
 したがって、不法行為事実(あるいは債務不履行事実)の特定、過失や因果関係の有無の判断のために、その事実認定の基礎となる証拠収集と、その法的判断のために必要な医学的知見の獲得をしなければならない。
 これが医療調査の目的である。

3 医療調査の内容

(1)診療記録の入手

・患者らの任意開示の請求、弁護士法23条の2に基づく照会手続
・証拠保全手続

(2)診療記録の分析

 まず、診療記録に何が記載してあるかを判読し、診療記録の整理・診療経過表の作成をする。

(3)医学文献の調査

 一般的な参考図書として、メディックメディア社の「病気がみえる」シリーズは図が豊富でわかりやすく、問題となっている疾患の基礎的な知識について学ぶことができる。
 また、専門的な事項は、弁護士会の図書館や医学部の図書館で調べることができる。  さらに、インターネットでは、『メルクマニュアル』『医療情報サービスMinds(ガイドラインの閲覧)』『独立行政法人医薬品医療機器総合機構(薬の添付文書の閲覧)』『CINII(論文のデータベース)』などにより正確な知識の獲得ができる。

(4)判例・症例調査

 医療過誤事件においても、類似判例の検索が重要であることは、他の事件と変わりはない。
 特に、過失の認定については参考にすべきことは多い。もっとも、注意しなければならないことは、各判決の過失の認定などに用いられた医学的知見は、その事件当時の医療水準を前提としているということである。

(5)協力医の意見聴取

 医療事件においては、過失や因果関係の有無を判断する上での医学的知見については弁護士が考えても分からないことが多いので、協力委の存在が不可欠である。
 協力医を見つける手段については、学校の同級生や先輩・後輩のツテをたどったり、前医・後医に意見を求めるということもある。また、医療事故調査会、COML、医療事故情報センターなどの機関において紹介してもらうということも考えられる。

以上