大腸癌 その1の続き

イ DukesD の場合の治療方法及び予後

(ア)外科的切除

 大腸癌の血行性転移には肝転移・肺転移・脳転移・骨転移などがあるが、肝転移や肺転移をしている場合であっても、癌細胞のすべてを切除することが可能であれば根治が望め、肝切除後の5年生存率が20%ないし60%、肺切除後の5年生存率が30%ないし60%と長期生存が期待できることから、切除可能な症例であれば、外科手術が第1選択である。

 肝転移・肺転移の手術適応の原則は、①原発巣が制御されていること②転移巣を遺残なく切除できること③多臓器転移がないか又は制御可能なこと④切除臓器機能が十分に保たれていることとされており、特に肝臓は、肝硬変が合併していなければ肝臓の約70%を安全に切除することが可能とされていることから、理論的には多発性であったとしても手術適応の可能性がある。もっとも、実際の肝転移の手術適応の判断は、術前診断での転移個数で決定されることが多く、非常に積極的に切除する医療機関においては、条件次第で、転移巣が20個程度であっても切除手術を行うことがあるものの、多くの医療機関では、数個程度で手術適応がないと判断されるのが通常であった。

(イ)熱凝固療法

 熱凝固療法は、熱によって癌組織を壊死させる治療法で、マイクロ波凝固療法・ラジオ波焼灼療法がある。マイクロ波凝固療法及びラジオ波焼灼療法は、原則として、肝癌及び転移性肝癌に対し、肝切除よりも侵襲の低い治療として肝切除の代わりに行われるものであるが、肝切除と併用されることや肝切除不能の場合に施行されることもある。

(ウ)化学療法(注意:平成14年当時)

 癌の切除が不能の場合、主に行われる治療は、生存期間の延長を目的とした化学療法である。もっとも、平成14年当時、日本の大腸癌に対する化学療法は、著明な副作用(骨髄抑制・下痢・食欲不振・脱毛等)の出現の問題、奏功率の悪さ等から標準的治療指針ではなく、患者の全身状態を考慮に入れ、医師の判断と患者の希望・生活環境を加味した上で治療が選択されるという状況であった。

 平成14年当時、大腸癌化学療法で使用されていた主な抗癌剤は5-フルオロウラシル(以下「5-FU」という。)である。5- FU は、その効果を増強させるためにロイコボリン(以下「LV」という。)と共に使用されていた(以下、5- FU とLV の投与を「5- FU + LV」という。)。5- FU + LV の効果については、奏功率21%、治療を開始してからの平均生存期間12. 5 か月との報告があるが、この報告は欧米のもので、5- FU については、人種間で投与可能な量に差があるとされ、黄色人種では投与量が低く設定されていたため、日本人に対して投与された場合、報告どおりの延命効果が得られたかどうかは明らかではない。

 なお、奏功率とは、画像上で腫瘍の大きさが2分の1以下になる確率のことであり、必ずしも生存期間の延長とは相関しない。抗癌剤が奏功したとしても、その後、小さくなった癌が急速に増殖したり、抗癌剤の副作用が原因で合併症を起こすなどして、結果として生存期間が短縮してしまうこともあり、また、反対に、抗癌剤が奏功しなくても、癌の増殖が長期間停止し、生存期間の延長が得られることもある。また、奏功率が悪ければ,生存期間の延長もあまり期待できないとされている。

 平成14年当時、大腸癌に対する抗癌剤としては、5- FU に加えて、塩酸イリノテカン(CPT -11)(以下「イリノテカン」という。)も使用可能であり、5- FU とイリノテカンを併用することにより肝転移、肺転移を伴う大腸癌に対し、高い治療効果を得られた旨の報告もあるが、当時、イリノテカンについては、どの程度の効果があるか判明しておらず、十分に普及していない状況であり、5 - FU +LV によって効果がなければ、他の抗癌剤治療は行わないのが一般であった。

大腸癌 その3 に続く