第2 第2回期日以降

1 次回期日以降

 第2回期日から後(事案によってはもっと後になることもあります。)は、口頭弁論として公開の法廷で行う手続きではなく、原則非公開の弁論準備手続きに付されることがあります。
 ラウンドテーブルに原告、被告、それぞれの代理人弁護士と裁判官が着席して、事案について意見を交換します。基本的には原告と被告の間での書面のキャッチボールです。それ自体は他の事件とは変わりませんが、医療事件の場合は特に、書面についての議論がその期日で交わされることも多く、期日が充実しています。

2 第二回期日以降のシミュレーション

裁判所「期日間に提出されたものを確認します。平成29年9月1日付で、原告第3準備書面が提出されています。これを陳述されますか。」
Aさんの代理人弁護士「はい。陳述します。」
裁判所「それで、次は、被告からの反論ということになりますが。」
B医師・C病院の代理人弁護士「その前に、今回の原告からの書面について申し上げます。今回の書面は、一貫して、午後4時の患者のAさんのSpO2が85であったことを前提として記載されています。しかし、午後4時の時点でAさんのSpO2が85と計測されたということは、前提にされるべきではありません。」
裁判所「それはどうしてですか。」

B医師・C病院の代理人弁護士「それは、具体的根拠とページ数の指定については追って書面を提出するけれども、おおまかには、85と書いてあるのは看護記録だけで、その後応急処置に当たった医師の記録や退院サマリーなどその他の記録には、一貫して95であると記載されているからです。85は書き間違いであると考えられます。」
Aさんの代理人弁護士「午後4時は、手術が終わってから1時間たった時間です。1時間後にAさんを巡回看護した看護師のNさんが、まさに看護した当時の記録として85と記載しています。医師はNさんの後にAさんを診察したので時間帯はずれていましたし、退院サマリーは退院後に作成されるものであって当時の記録ではありません。午後4時という時点との関係で最も信頼性が高いのはNさんの85という記録のはずです。」
裁判所「その午後4時の時点でのSpO2が85か95かということは、本件においてどういう意味を持ちますか。」

Aさんの代理人弁護士「手術Xは、・・・という機序から、手術後2時間以内にSpO2が90以下にまで下がっている場合には特に、術中に血管を損傷してしまったことを強く疑い、つぎの処置を行わなければならないのです。このことは、被告も答弁書で認めています。手術後1時間で85だったか95だったかということは、午後4時の時点ですでにAさんに血管損傷が生じていたことを根拠づける事実として重要です。」
B医師・C病院の代理人弁護士「しかし、当方の主張としては、実際には午後4時の時点では95であったことから、血管損傷はまだその時点では生じていなかったはずです。Aさんの血管が損傷したのは、残念なことですが、Aさんの血管が脆弱であったために生じた不可避の術後合併症なのです。」

裁判所「なるほど。原告のこれまでの主張としては、B医師の手技が拙劣であったから手術Xの時点で血管を損傷したということでしたね。そして、手術Xの時点で血管を損傷していたことは、術後1時間のSpO2の数値からもわかるということで主張を立てておられる。一方で、被告は、術後1時間のSpO2の数値は90を超えているため血管損傷は手術中に生じていたことを裏付けないという反論をされるのですね。」
両代理人「そうです。」

裁判所「被告には、いまいただいた点を書面にして反論していただきたいと思います。被告は、その他の反論と併せて、準備としてどのくらいかかりますか。」
B医師・C病院の代理人弁護士「ストーリーはわかっていますので、通常通りで結構です。」

・・・以下、次回期日の日程が調整されます。・・・

 期日は淡々と、「準備書面のとおり陳述します。」と進むこともありますし、以上のように双方言いたいことを議論することも多いです。今回は紙幅の関係上あっさりと書きましたが、そんなのはおかしいとか、こっちをみればその主張の根拠はない、など、特に白熱した期日になった後は、非常に疲労します。

 この時点で原告の血圧がこうだったのは全体の位置づけの中でどういう意味を持つのか、数点主張されている過失同士の関係について、こちらの過失をとればこの点は因果関係の話になるのではないか、そうすると議論をする順番はどうすべきかなど、原告と被告とで互いに有利と思う展開があります。相手方に場が引っ張られていると思えば、できるだけ早い段階で反応する必要があります。理想は、以上のとおり、「その期日内」です。
 裁判所の訴訟指揮もあります。裁判所の理解が原告と被告と同じ程度にまで至っているか、もっと先を読んだものであるときもあれば、まったく裁判所が当事者の話について来ていないと感じたこともあります。