(ア)MRSAの定義

 MRSAは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の略語で国際用語になっているが、その本態は新型の多剤耐性S.aureusである。S.aureusは人体寄生性が強く、鼻咽腔粘膜などに定着している時は無害であるが、傷口から侵入し感染が起こると、強い病原性を現す。とくに免疫不全状態にある患者では腹膜炎や敗血症などの深部感染に変わりやすいので、適切な化学療法で菌を早期に排除しないと、患者は不幸なことになりかねない。したがって、抗菌剤が作用しない耐性菌の増加はこの菌による感染症を治療するうえで常に大きな問題となる。

(イ)治療方針

 細菌培養を行い、細菌が分離された場合、それが感染か定着かを鑑別することが大切である。何故ならば感染であれば、抗菌薬の全身投与が必要であるが、定着であれば、抗菌薬の投全身投与は必要ないからである。鑑別には病変部に感染症、つまり、発赤、腫脹、疼痛、熱感などの感染症状があることが重要である。その他、膿のグラム染色で好中球の貪食画像の有無も有用である。あるいは培養した菌量が多いか少ないかで、感染か定着かを判定することもある。たとえば菌量では分離された黄色ブドウ球菌が1cm²あたり10⁷cfu以上となった場合が一つの目安になる。

 MRSA感染症の治療には、抗MRSA薬が使用されるが、その際には、①感染症の治療には十分な知識と経験をもつ医師またはその指導ものとで行うこと、②原則として抗MRSA薬および他の抗菌薬に対する感受性(耐性)を確認すること、③投与期間は、感染部位、重症度、患者の症状などを考慮して、適切な時期に抗MRSA薬の継続投与が必要かを判断し、治療上必要最小限の投与期間にとどめることが原則である。

 抗MRSA薬の使用については、感染症に対して抗MRSA薬を投与し、治療薬物モニタリングを実施し、至適用量・用法を確認する。

 そして、MRSA感染症に対して最初に選択する治療は、バンコマイシンである。

(ウ)小括

 したがって、MRSA感染が判明した段階で、早期に患者に対し、説明をし、抗MRSA薬の投与をする必要がある。

参考文献
MRSA感染症の治療ガイドライン 一般社団法人日本感染症学会 編集:MRSA感染症の治療ガイドライン
MRSA感染症 株式会社新興医学出版社
今日の治療指針2010年版/MRSA感染症 株式会社医学書院