1.電子カルテの改ざん

 電子カルテとは診療情報が電子化された形式で保存された診療録のことをいいます。
 最近は大病院を中心に個人経営の医療機関等においても電子カルテの導入が進んできており、筆者が行った最近の証拠保全手続や診療録開示手続においても電子カルテとして保存されている場合が多いです。
 もっとも、大規模な医療法人系列の医療機関であっても地域によっては紙媒体で保存されていることもありますので医療機関の規模だけで判断できないこともあります。

 従来のように紙媒体の形式で診療録が記録・保存されている場合、記載内容が個性的な字によって記載されていることがあり、後に第三者が読んでも記載内容が読み取りにくいことがありますが、電子カルテであればワープロソフトのように誰が記載しても同じ文字で記録・保存されるため後に第三者が読んでの記載内容が読み取りやすいという利点があります。

 もっとも、診療録が電子カルテ化されていることの最大の利点は、記載内容を上書き(更新)した場合には電子カルテシステム内に更新履歴が残ることにより容易に記載内容の書き直しや改ざんが出来なくなった点にあり、証拠としての信用性を担保できる点にあると思います。

 このため、特に証拠保全手続を行う場合には証拠化の方法などを事前に検討しておく必要がありますので、対象となる医療機関が電子カルテシステムを導入しているかどうかを当該医療機関のホームページを閲覧するなどして必ず事前に調査しておきます。

2.電子カルテの改ざんが認められた裁判例

 前述のとおり、電子カルテ化された診療録を上書き(更新)した場合には電子カルテシステム内に更新履歴が残るため、診療録が電子カルテの形式で記録・保存されている場合には紙媒体の形式で診療録が記録・保存されている場合と比べ診療録の改ざんのおそれは低いといえます。

 もっとも、技術上、電子カルテといえども完全に改ざんを防ぐことが可能なわけでなく(詳細は割愛します)、残念ながら電子カルテであっても記載内容の改ざんが起こる可能性はあり実際に電子カルテの改ざんが認められた裁判例(大阪地判平成24年3月30日判タ1379号167頁)があります。
この裁判例においては、うつ病治療のために通医院していた患者の診療録に関し電子カルテを書き換えた際に書き換え前の記載が保存されない設定になっており、原告から診療録の開示請求を受けた後に医師が電子カルテを改ざんして記載を付加したと判断されました。

 このような裁判例もあるため、患者側としては診療録が電子カルテの形式で記録・保存してある場合でも診療録の収集に万全を期すことはもちろん、診療録の入手後も記載内容に改ざんを疑わせるような不自然な点がないかを精査する必要があるといえます。

弁護士 藤田 大輔