1 障害された末梢神経は?

しびれ:小指中心 ⇒尺骨神経?

*正中神経・・・母指・示指・中指の掌側のしびれや疼痛

2 因果関係、障害の有無、過失等

採血時、注射針により神経損傷?

裁判例では、

・血液の逆流の有無
・痛みを訴えた時期
・採血の態様(やり直した等)
・針を刺した部位
・しびれを訴えた部位
・採血後の診断名

等を考慮し、障害の有無と因果関係が判断されている。

「注射針を深く刺して正中神経を傷つけないよう注射針を適切に操作するべき注意義務」(下記裁判例)

3 裁判例

●高松高判H15・3・14

採血により正中神経を損傷し、それが原因でRSDを発症したと認めた。
因果関係、障害の有無、過失について、ほぼ原審(下記)を引用。

●松山地判H14・9・5(上記高判の第一審)

1 因果関係,障害の有無について

本件採血においては,原告の右腕尺側皮静脈から採血するため,注射針が肘窩(肘の内側の窪んだところ)部分に刺されたが、

・血管内に針先が入ったならば通常認められる血液の逆流がなかったこと
・原告は針が皮膚表面に刺された瞬間ではなく針が刺された後で痛みを訴えていること
・結局右腕からの採血はできず,あらためて原告の左腕から採血されたこと
・肘窩の尺側皮静脈に針を刺す場合,深く刺すと正中神経を傷つけることがあること
・採血直後,原告は正中神経支配域である右手第1,2指のしびれを訴えていること
・採血の5日後には,「右正中神経麻痺,反射性交感神経性萎縮症」と診断されていること

これらの事実に照らせば、本件採血の際、被告Aが刺した注射針は血管を外れて深く刺さってしまい、原告右腕の正中神経を傷つけたものと推認するのが相当。

そして、

・原告は本件採血直後から右手のしびれ等を訴えるようになったこと、
・原告は現在でも右手には触れられただけでも強い痛みがあるなどと訴え、
・愛媛大学病院医師らは,いずれも原告に知覚障害,運動障害等を認め,本件採血を原因とする「右上肢カウザルギー」ないし「RSD」の症状がある旨診断していること、
・RSDないしカウザルギーは,四肢又はその他の神経の不完全損傷によって強度の疼痛が生ずるものであることなどが認められ、

これらによれば、原告は本件採血によって正中神経が傷ついたことを原因として、カウザルギーないしRSDを発症し、疼痛を中心とする後遺障害が残ったものと認めるのが相当。

2 過失について

肘窩の尺側皮静脈に針を刺す場合、深く刺すと正中神経を傷つけることがあるため、適切な深さに刺すよう心がけるべきで、このことは採血に従事するものにとっては基本的な注意事項の一つ。
ベテランの保健婦・看護婦であった被告も当然これを知っていたと認められる。

本件採血においては、右腕肘窩の尺側皮静脈から採血しようとするのであるから、注射針を深く刺して正中神経を傷つけないよう、注射針を適切に操作するべき注意義務があった。

以上

弁護士  池田 実佐子