(総論)

麻酔投与は、外部から人為的な薬剤投与を行い、意識の消失や反射の減少、筋弛緩な  どの効果を得る半面、呼吸機能など人間の基本的生理に抑制効果が生じさせるという性質を持つ。
たとえば、麻酔を用いて筋弛緩を行えば、呼吸機能は抑制される。
それゆえに麻酔を投与する行為自体が危険な要素を内包した行為であるといえる。

(1)麻酔事故と予見義務

先述のとおり、麻酔自体が危険を内包しているため、麻酔を使用する医師には事前に危険を想定して事前の検査義務が課される。
それゆえに、事前検査を行わない場合には注意義務違反となると考えられる。

(2)麻酔事故と結果回避義務

そして、仮に事前の検査を行っても麻酔の投与自体が危険を内包する行為であり、医療行為中にショックなど事故が起きる可能性は否定されないため、医療行為中にショック等が生じた場合に備えて人的・物的な設備を予め準備したうえで麻酔を使用するべき注意義務が課され、これらの設備の準備がないままに医療行為中にショックなどの事故が起きた場合には医師の結果回避義務違反となる。

(3)麻酔事故と因果関係

麻酔事故では、麻酔中の医療行為からショック等が発生した場合、麻酔と結果の因果関係の有無の判定が困難であるケースが多い。

(4)麻酔事故の争点

麻酔事故をめぐる争点としては、手技上の過誤、事前準備に関する注意義務違反、医療行為中における注意義務違反、医療行為後の麻酔管理に関する注意義務違反が争点となることが多い。

(5)裁判例

①最判平成8年1月23日判時1571号57頁
②最判平成15年11月14日判時1847号30頁
③東京地判昭和50年6月17日判タ323号125頁
④東京地判平成6年4月27日判時1531号61頁
⑤東京地判昭和59年12月24日判タ550号226頁

など。

以 上

弁護士 藤田大輔