1 医療過誤を繰り返す医師

 医師も人間ですから過ちをおかすことはあるわけで、日頃、医師や医療機関を訴えている私としてはちょっと気の毒だなと感じることもあります。

 でも、そうはいっても、医療事故を繰り返す医師は、「医者も人間」では説明できない、何か医師として、また職業人として、基本的な姿勢に問題があるように思います。

 実は、三重県四日市市の教師が代表をつとめる「リピーター医師をなくす会」というのがあって、医療事故を何度も繰り返す医師に対して行政処分を求めていたことが分かりました。具体的には医師免許の取り消しです。

 その医師は、過去4件の医療ミスを起こし、そのうち1件は業務上過失致死罪で刑事訴追され、2006年に罰金50万円の判決(確定)が出ていました。4件はそれぞれ民事裁判も起こされ、その医師はいずれも過失を認めて裁判上の和解をしているようです。
 民事も刑事も、一応これらの事件は解決済みなんですが、この医師、この分だとまた医療事故を起こしかねないということで、遺族らが医師免許の取り消し処分を厚生労働省に求めたわけです。

2 厚労省、刑事処分のみ対象

 まあ、これだけ医療事故を繰り返しているのですから、行政処分は当然だと思うんですけど、問題はその際に考慮すべき案件は刑事処分が確定した1件のみを対象とするのか、それとも刑事事件にならず民事事件で和解して解決した他の3件も含めるのかで、だいぶ結論は異なってくるでしょう。

 この点、厚労省は、刑事処分が確定した1件の医療事件のみを処分対象にしました。
 そして、行政処分には、大きく分けて①免許取消し、②3年以内の免許停止、③戒告の3つがあるのですが、今回の処分は一番軽い戒告にとどまりました(日経新聞2011年10月2日朝刊)。この処分については、法曹関係者からの批判も多いようで、「厚労省は、刑事処分を追認しているだけ」だとの声もあがっています。

 おそらく、厚労省がこのような判断に至った背景には、刑事処分は判決が確定していることや、刑事手続きの権威の高さもあるでしょう。これに対して、民事裁判のほうは全て和解してしまっています。医師本人は過失を認めているようですが、判決がでているわけでもない…。

 私は、この事件の医師は、何度も医療事故を繰り返しており、問題がありますので、和解した民事事件も含めて処分対象にして、免許停止か場合によっては免許取消でもよかったのではないかと思います。

 但し、和解した民事事件を常に行政処分の対象にすることには実は問題があります。なぜならば、それらも行政処分の対象になるとすると、医師は容易に裁判で和解に応じなくなるでしょう。また、仮に和解するとしても、過失は認めないでしょう。あくまでも解決金名目(損害賠償ではなくて)での和解しかしなくなると思います。ましてや、和解条項に「再発防止誓約条項」を入れることにも命がけで抵抗するでしょう。
 これは、大局的にみると、被害者遺族の救済にはなりません。却って医師の対決姿勢を強めてしまうからです。

 行政処分、特に免許取消や停止などといった重い処分は、医療事故を繰り返す悪質な医師に限定すべきでしょう。