今回は、我々に重要な情報を伝達する役割を果たす神経について触れてみたいと思います。神経が情報伝達手段としての重要性を有する反面、そういった性質上、ひとたびこれが傷付けられると、ずっとその痛みに耐えなければならない又は麻痺して感覚がなくなる等甚大な被害をもたらします。そこで、神経についての概略的説明の後、主に神経の損傷に関するお話をしてみます。

まず、神経は大きく、中枢神経と末梢神経に分けられます。中枢神経は脳や脊髄等体の中枢部に位置して、生命維持の要となる重要な役目を担っている部分の神経をいいます。これに対し、末梢神経は、その中枢神経から体の各部位に伸びている神経全体をいいます。

そして、神経自体を細かく見ると、他の細胞から入力された刺激を受け取る部分の樹状突起と、その刺激によって活動電位が発生し、これを情報として他の細胞に出力する部分の軸索で構成されています。このうち、軸索という部分が壊されるか否か神経の損傷の重症度を測る指標となってきます。

軸索は、細長い細胞体であり、髄鞘(ミエリン)とシュワン細胞を介して末端はシナプスを形成しています。なお、髄鞘のない軸索もあり、これを無髄線維と呼び、髄鞘のあるものを有髄線維と呼んでいます。

ここではまず、1本の神経を想定して、その損傷を考えてみます。

神経損傷の第一段階としては、一過性伝達障害というものがあります。これは、軽度の挫傷や圧迫によって、髄鞘が炎症を起こして壊れてしまう現象です。髄鞘が壊れることを脱髄といいますが、脱髄が生じると、情報伝達がスムーズにいかなくなり、しびれや麻痺などが起きます。ただ、この場合、軸索は温存されており、脱髄は時間が経てば回復するため、神経障害も一時的なものにすぎません。目安として、数日か数週間で回復するのがこの一過性伝達障害です。

次に、神経損傷の第二段階は、軸索断裂です。より強固な外部からの力が加わり、軸索が伸ばされワーラー変性という現象を起こすものです。ワーラー変性とは、髄鞘が壊れるにとどまらず、シュワン細胞も引き伸ばされて分裂し、細胞体の帯のようなものができてしまう状態をいいます。ただ、神経内膜・周膜・上膜は損傷されず、神経管が維持されているため、自然再生による機能回復が可能とされています。もっとも、原因が取り除かれないままの状態が長期に及ぶと、筋萎縮等により機能回復できなくなることがあります。

そして、神経損傷の最終段階は、神経断裂です。この場合、シュワン細胞が完全に破壊され、神経内膜・周膜・上膜も断裂し、神経管の連続性が断たれた状態になります。こうなると、自然回復は不可能です。したがって、断裂した神経端同士を吻合する神経縫合ないし他の健全な神経を移植するといった外科的手術しか、機能回復を図る途はありません。

以上は、神経1本に着目した話であり、実際に臨床の場面では、それが何本も束になった神経の集合体を構成している部位を治療するといったことが多く、1、2本の神経が断裂しても、感覚・知覚や情報伝達に支障が生じないということもあるのです。