1 協力医とは

 協力医とは、医療紛争の際に、患者又はその遺族に対して医学的知見を提供するなどの協力をする医師をいいます。

 もっとも、その協力の仕方・度合いには温度差があり、患者側の代理人弁護士に医学的知見を提供するだけにとどまる医師もいれば、裁判などで利用する意見書を書いてくれる医師もおります。さらに進んで、法廷に立ってもいいとさえ言ってくれる医師もたまにおります。

 このような協力医は、協力の程度は様々であるにせよ、医学の専門家ではない弁護士にとって大変ありがたい存在です。特に、患者側の代理人をつとめる弁護士にとっては、医師や医療機関を敵に回すわけですから、なかなか専門家の協力を確保しにくいのでなおさらです。

 まず、患者側の弁護士として、医療裁判を手がけるためには欠かせない存在であることは間違いないと思います。

2 医療事故情報センター

 かといって、ひとりひとりの弁護士が自前で協力医のネットワークを構築するのは容易ではありません。

 この点頼りになるのが、名古屋にある「医療事故情報センター」です。

 この機関は、日本全国に患者側に協力してくれる医師のネットワークを持っていて、会員になっている弁護士に協力医を紹介してくれます。

 私も、ここの正会員になっています。案件毎に日本全国の協力医の中から最もふさわしい医師を選んで紹介してくれます。名古屋にあるのですが、名古屋の医師のネットワークではなく、例えば、私自身も過去に北海道まで飛んだことがあります。

 さて、そうは言っても、その協力の度合いは、その協力医によってまちまちです。全面的に協力してくれる医師もいれば、医学知見の提供のみで名前も表に出さないで欲しいという医師もおります。

 その案件と協力医次第というところもあるので、協力医のネットワークさえあれば「鬼に金棒」とまで言えるかというと、そんなに甘くはありません。でも、非常に頼りになるのは確かです。

 ところで、医療事故情報センターの協力医を活用していて常々感じる限界は、第三者機関を通じての協力であり、我々と個人的な信頼関係で結びついているわけではないという点です。

 そこで、私の法律事務所でも、この医療事故情報センターのほかに、協力医の私的ネットワークを気づいています。現在、私どものために、関東と関西にそれぞれ私的に情報を提供してくれる協力医がおります。

3 協力医の活用方法

 協力医のネットワークを築くことに成功したからといって、協力医に丸投げではだめです。
 私の印象では、協力医と言えども、本音では同業者である医師の味方をしているような感じがします。
 弁護士がろくに勉強もせず、調査もせずに、「協力医に教えてもらおう」などという姿勢で臨むと、適当にあしらわれる可能性があります。

 やはり、事前にしっかり勉強し、独自の調査もして鋭い質問を協力医にぶつけるくらいの覚悟でないと、大して役にも立たない助言をもらって終わりです。なので、私の場合も、事前にしっかり調べて準備し、協力医になめられないようにしています。例えば、協力医が言及していなかったとしても、私のほうから、「CRPの値が高いと思いますが、感染症を疑えませんか?」とか「カリウムが高値であり、アニオンギャップも増大していますが、代謝性アシドーシスの症状をしめしているのではありませんか?」など、協力医が言及していなかった部分についてもこちらから質問をぶつけるようにしています。

 これが現状なので、たまに相手方の医師に反対尋問しているような空気になり、論争になることもあります。そのくらいの姿勢でないと、なかなか有益な情報を得られません。

4 患者側に迎合する協力医

 これに対して、患者側にとても友好的で協力的な医師もたまにおります。
 患者のために少しでも役に立ちたいという思いがあるようで大変嬉しいのですが、このような先生は、ある意味患者側に迎合しすぎていて少々歪んだ医学的知見を述べることがあるのです。

 これは、確かに裁判を始めるに当たっては役に立ちますが、早々に行き詰まります。被告である医師や医療機関は決して患者側には迎合しませんから、原告の主張を容易に論破する医学的知見がどんどん出てくる…。早くも負け筋の裁判になってしまうのです。

 患者側にとって本当にありがたい協力医とは、患者側に迎合する医師ではなく、医師として自ら正しいと信ずる医学的知見を話してくれる医師です。このような先生が、「このケースでは医師の責任を問えません」というのであれば、患者側としては裁判をするべきではないのです。

 したがって、以上の点に十分留意しなければ、協力医のネットワークを持っていても宝の持ち腐れです。決して有効な活用はできません。