- Q.
- 最近はキャッシュレスが増えてきました。私も、小銭が稼げるからと仮想通貨を利用していました。ところがある日、巨額の資金が流出したとして、預金が0になってしまいました。。。
最初はハッカーに対して憤りを感じていましたが、よく調べてみると、この会社がネット回線が繋がっている状態で仮想通貨を管理していたことが判明しました!
これは、運営会社にも責任があるのではないでしょうか?損害賠償を請求したいです!
- A.
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取引所がハッカーによる資金流出の防止のために、適切な対策を練っていなかったのであれば、取引所に対し、損害賠償請求できる可能性があると思います。
ただし、単純にネット回線がつながっている状態で仮想通貨を管理していたといった理由だけで、損害賠償請求ができるというものではありません。
現在のところ、仮想通貨の管理方法について、一定の任意団体におけるガイドライン等はありますが、管理方法に明確な基準や統一的なルールがあるわけではありません。
講じるべき対策をとっていないと判断されれば、損害賠償請求をすることは可能だと思います。
なお、取引所に資産がなく倒産してしまった場合には、たとえ損害賠償請求が可能であったとしても現実的に金銭を回収できないことが考えられます。
なぜ仮想通貨の流出が起きたのか
平成30年1月26日にコインチェックが、顧客の資産として管理していた、仮想通貨の一つである「NEM」を、ハッカーによる盗難で約580億円も流出させたことを発表しました。
その後の報道で、コインチェックが、
①コインチェックが保有するNEMの全てをネットがつながったオンラインの状態(ホットウォレット)で保管していたこと
②マルチシグという、複数の暗号キーを分散するための施策を行っていなかったこと
がわかりました。
マルチシグを導入していれば、セキュリティーは大幅に改善し、今回のハッカーによる盗難を防ぐことができたかもしれません。
失った仮想通貨の損害賠償は請求できる?
損害賠償請求をするためには、
①予見可能性があり
②結果を回避できる可能性があったにもかかわらず、その措置を講じなかった
といえなければなりません。
本件では、仮想通貨をネットがつながった状態で保管すれば、ハッカーなど悪意のある第三者から狙われ盗難にあう可能性は十分に予見することができました。取引所は、円滑で迅速な取引のために一部をインターネットに繋がったオンライン上で保管することもあるようですが、コインチェックは「NEM」の全てをオンライン上で保管していたようです。また、仮想通貨をネット上で保管しなければならない何らかの事情があったのかもしれませんが、その場合には、よりセキュリティー対策をすべきであり、少なくとも推奨されているマルチシグによる対策を行っておくべきだったのでしょう。
ただ、セキュリティーの技術とハッキングの技術は日を追うごとに発展し、いたちごっこです。ある時までの時点で、万全の態勢でセキュリティーを整えていたとしても、ある日突然ハッキングされることが起きます。
すなわち、「十分なセキュリティー対策」といっても、絶対的なセキュリティー対策は存在せず、対策が十分だったかは「程度問題」でしかありません。
そのため、ハッカーなどの第三者による盗難にあったからと言って、常に損害賠償請求ができるものではないと思います。
仮に運営会社が破綻、破産してしまった場合は?
また、今回コインチェックは、自己資金460億円の補償をすると発表しています。但し、現実に支払われるか、支払時期はいつになるのかは、現時点ではいまだはっきりしていません。
仮に破綻してしまった場合は、銀行の預金保険のようなペイオフ制度は存在しないため、投資した資金の回収は困難なものとなるでしょう。
破産した場合は、会社が有していた資産を按分して債権者に配当することになります。通常は、配当を得られる可能性は低く、配当を得られたとしても非常に少ない金額でしかありません。
補償の可能性は低いが、例外も存在する
ただし、平成26年に、破綻したマウントゴックス社は、破産申し立て後ビットコインが急騰したため、462億あった債権を会社が有していたビットコインが債権総額を上回り、満額で配当できたというニュースもあります。ただ、今後もこのような仮想通貨の値上がりを期待できるかは、誰もわからないため、仮想通貨の取引所が破綻した場合に、配当や補償をうけられるかは、現時点では誰もわかりません。
また、取引所によっては、ハッキングにより損害を顧客が被った場合に、約款で免責(取引所が責任を取らない)条項を設けているところもあるようです。
仮想通貨の取引をしている方は十分な注意を
いずれにしても、仮想通貨については、法制度や社会ルールが確立していないため、仮想通貨の取引をしている方は、思わぬトラブルに巻き込まれる恐れが高いことを自覚し、自己防衛のため情報収集を十分に行う必要があるでしょう。