携帯電話やスマートフォンで手軽にテレビ放送を視聴できる「ワンセグ」。これをめぐり、今日、さいたま地裁で興味深い判決が下されました。
ワンセグ電波を受信できる携帯電話を購入したら、NHKとの間で受信契約を交わして受信料を支払わなければならないのか。裁判所はこの点について、携帯電話所有者の契約締結義務を否定すると結論付けたのです。
受信契約の締結義務?
「テレビを買ったら、NHKと契約をしなければならない」、「NHKの集金担当者が突然自宅を訪問してきて、契約して受信料を支払うよう求められた」――。このようなNHKの受信料や受信契約に関する話、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
これら受信契約や受信料の支払をNHKから一方的に求められてしまう根拠は、放送法の条文にあります。
放送法64条1項
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送・・・に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
ここにいう「協会」はもちろん「日本放送協会」、つまりNHKを指しますから、この規定に基づき、NHK放送の受信が可能な受信設備(テレビ)を設置した以上はNHKとの間で受信契約を締結することが法律上義務であるとされているわけです。
これまで、この受信契約締結義務の有無や契約の成否等については、多くの訴訟で争われてきました。たとえば、NHKがビジネスホテルの「ドーミーイン」を運営する会社に対して、各客室に設置されたテレビの台数分の契約締結とこれに対応する受信料の支払を求めた事件では、東京地裁が昨年、NHKの請求をほぼ全面的に認める判決を下していますし(東京地裁平成27年10月29日)、テレビ設置が明らかに認められる人に対してNHKが受信契約の申込みをしたら、2週間が経過した時点で自動的に契約が成立すると判断された事例も存在します(東京高裁平成25年10月30日)。
これらの判断の前提にあるのは、放送法64条1項があくまで「受信機設置者に放送受信契約を契約する義務を強制的に課したもの」であり、その趣旨として「受信契約を成立させて、これに基づき受信者に受信料を支払う債務を発生させることにある」と解されているためであると考えられます。