先日、「旅館業法」の許可なく営業したとして「旅館業法」違反の疑いで「ハイブリッド・ファシリティーズ」の役員ら6名が書類送検されたとのニュースがありました。
 また、今年の4月、大阪市で同じく「旅館業法」違反で3名が書類送検されたニュースや、平成26年5月には、「旅館業法」違反で外国人男性に罰金3万円が科せられたというニュースもあります。

 実は、これらは全て、いわゆる「民泊」に関するニュースなのですが、今、世間を騒がせている「民泊」とはいったい何なのか?何が議論されていて、何がダメなのか?徹底解説します。

1.民泊と旅館業法

 そもそも、「民泊」とは、明確な定義はないのですが、一般的には、不特定の者が一般の自宅に宿泊料を支払って泊まることを指すといわれています
 2020年の東京オリンピックでは1日あたり92万人が東京を訪問するといわれており、宿泊施設が絶対的に足りないことが問題となっている中、このような「民泊」が注目されているというわけです。
 現在、Airbnbというサンフランシスコ発祥のウェブサイトなどが「世界中の宿泊先を求める人」と「世界中の自宅を宿泊先に貸しても良い人」をマッチングサービスを行っており、日本でも、このウェブサイトに登録して自宅を「民泊」している人が圧倒的のようです。
 読者の皆さまも、早朝や夜、住宅街の普通のマンションに、明らかに住民ではなさそうな大きなスーツケースをもった外国人が入退するところを見たことはありませんか?
 このような人たちがAirbnbなどでマンションの一室を、数日間、宿泊先として借りた人たちです。ちょっと前までの円安による日本旅行ブームにより、一気に増えたと聞いています。

 ところで、何事にもルールや法律があるように、当然、「不特定の者から宿泊料をもらって他人を宿泊させること」についても、「旅館業法」という法律が規律しています。

 まず、「旅館業法」は、「旅館業を経営しようとする者は、都道府県知事(東京都の場合、区長)の許可を受けなければならない(3条)」とし、許可なく旅館業を行った者に「6月以下の懲役か3万円以下の罰金」を科しています。
 ここで、許可をとらなければならない「旅館業」とは何かが問題となりますが、ホテル営業や旅館営業はさておき、「民泊」が関係する「簡易宿所営業」とは、「宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」と定義しています。
 そして、「業(営業)」とは、法律上、「反復継続の意思を持って行うこと」、要するに、何回も何回も繰り返し繰り返し行うつもりであることを意味しますので、「簡易宿泊所営業」とは「繰り返し行うつもりで、不特定多数の人から宿泊料をもらって人を宿泊させること」を意味することになります。

 ここで「民泊」が問題となってくるのですが、「民泊」も、1年に2、3度、日本に遊びに来る外国の友人を有料で自宅に宿泊させるのであれば、上記の「業(営業)」には当たらず、もちろん、「旅館業法」の許可もいりません。
 しかし、Airbnbなどのマッチングサイトに登録し、世界中の不特定多数の人から宿泊料をもらって、月のうち10日間も20日間も宿泊させる行為は、どう考えても「繰り返し行うつもりで、不特定多数の人から宿泊料をもらって人を宿泊させること」に該当するでしょう。
 となると、Airbnbなどを利用して「民泊」をする場合には「旅館業法」の許可が必要になるのですが、実は、「旅館業法」はこの許可基準を各都道府県や区の条例に任せているのです。

2.民泊と条例

 ここでポイントは、「民泊」を広く認める方向で考えている都道府県や区は許可基準を”ゆるく”設定するでしょうし、「民泊」を認めない方向で考えている都道府県や区は許可基準を厳しくすることになります。
 その分かりやすい例が「フロント(法律上は「玄関帳場」といいます(笑))の設置」義務です。
 大多数の都道府県や区、例えば、新宿区などは「新宿区旅館業法施行条例」にて、「宿泊者の利用しやすい位置に、受付等の事務に適した広さを有する玄関帳場(フロント)を設置すること」を「旅館業法」の許可基準としています。
 要するに、住宅街にある普通のマンションの一室で「民泊」をするにしても、マンションの入り口に「フロント」を勝手に設置できるわけありませんし、個人で「民泊」をやっている限り受付の人を「フロント」に常駐させることなんて不可能なので、「どうせ、許可基準なんか満たせないだろ」的な発想で「民泊」を事実上、禁止しているわけです。
 新宿区は特に厳しいようですね。
 これに対し、当職の調べたところでは、都内では大田区や品川区、渋谷区は「フロントの設置」を許可基準としていないようですので、他の要件さえクリアすれば「民泊」であっても「旅館業法」の許可を受けることができそうです。

 このように整理すると、「民泊」のうち、「1年に2、3度、日本に遊びに来る外国の友人を有料で自宅に宿泊させる程度」であれば、そもそも「旅館業法」の許可は不要であり適法となるでしょうが、「Airbnbなどのマッチングサイトに登録し、世界中の不特定多数の人から宿泊料をもらって、月のうち10日間も20日間も宿泊させる行為」の場合には、「旅館業法」の許可を受けた「民泊」は適法で、それ以外は違法ということになると考えることができます。

3.政治の状況

 ところで、「民泊」のほとんどが、許可を得ていないと聞きます。
 Airbnbのサイトを見ていても、新宿区内の「民泊」先は、ほとんどがいたって普通のマンションであり、およそ「フロント」なんてなさそうなマンションばかりですので、「旅館業法」の許可がない、いわゆるヤミ「民泊」と思われます。

 そこで、このままの状態(宿泊先が足りない、でも「旅館業法」の許可は厳しい、違法な「民泊」ばかりが増える)で2020年東京オリンピックに突入していいのか、それとも規制緩和すべきか、が政治の世界で議論されています。
 しかしながら、実は「旅館業界」と「住宅業界」のせめぎあいが原因で遅々として進んでいないようです。
 現在、「民泊」を「旅館業法」の許可の対象から外す(または、ゆるくする)ことが検討されているのですが、「旅館業界」としては「民泊」は強力なライバルとなることから、当然、猛烈に反対しており、「もし、規制緩和するとしても、年間30日まで」という制限を設けるように政治工作を行っているようです。
 これに対し、「住宅業界」は、新たなビジネスということで息をまいており、「民泊」のマッチングサイトを運営する「IT業界」と組んで、「日数制限には断固反対」という政治工作を行っているようです。
 何だか、「2020年東京オリンピック」という大きな波にゆられる中、いろんな業界のいろんなしがらみが発生し、果たして「民泊」解禁の方向性すらあやしくなってきたというのが現状というわけです。

 ところで、以前、当職が住んでるマンションでも、ある一室がAirbnbに登録されていたということがありました。
 この時は、不特定の人間が高いセキュリティを売り物にしているマンションに入ってくるのはけしからん、ということで直ちにその一室を特定し、規約を改正して「民泊」を禁止し、所有者とAirbnbの運営会社に警告して解決しましたが、今後の政府の動き次第では、「禁止」ありきではなく、多角的に議論していかなければならないのかもしれません。