今月15日、中国の「ドンディアオ級情報収集艦」が、鹿児島県の口永良部島の西側、屋久島の西南側を通過したといったニュースが報道されました。
 条約等により、陸地から12カイリ(約22キロメートル)まではその国の了解であるとされていることから、中国軍艦の行動は、「中国による日本領海への無断侵入」と考えることができそうです。

 ちなみに、「中国軍艦」と言いましたが、正確には中国の法執行機関の一つである「中国海警局」という、どちらかと言うと戦争を行う軍隊ではなく、海上での犯罪(密輸など)の取り締まりや、海上での交通整理、海上での救難救助などが主たる業務とされています。
 なお、中国の軍隊として、「人民解放軍」という名前をよく耳にしますが、実は、中国という国を指導する「中国共産党の軍隊」であって、中国における軍事組織の一つとして位置づけされているようです。

中国側は「問題ない」と主張

 さて、こういった中国の行動に対し、日本政府は強い抗議を行ったようですが、これに対し中国側は「無害通航」だから問題ない、という返答をしました。
 この「無害通航」ですが、日本や中国も加盟・批准する「海洋法に関する国際連合条約」は、

・すべての国の船舶は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、この条約に従うことを条件として、領海において無害通航権を有する(同条約17条)

・通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる(19条)

と定めています。
 要するに、「条約によれば、日本の平和、秩序又は安全を害しない限り『無害』と解されるので、中国軍艦は日本の領海内を通行する権利がある」ということです。

 しかし、「海洋法に関する国際連合条約」は、
・武力による威嚇又は武力の行使
・沿岸国の防衛又は安全を害することとなるような情報の収集
・漁獲活動
・調査活動又は測量活動の実施
・通航に直接の関係を有しないその他の活動
などは、「沿岸国の平和、秩序又は安全を害する」と規定していますので、このような場合、「無害な通航」とはらならないわけです。

中国の軍艦が日本の領海を通行した目的は?

 そこで、日本政府も、この「ドンディアオ級情報収集艦」が、いったい、どういう目的で日本の領海を通航したのかについて調査をしているというわけです。
 一部のマスコミや2chなどでは、「領海侵犯だ!」などと騒いでいますが、「中国の軍艦が領海に入った」=「領海侵犯」ではないので、ここは冷静にならなければなりません

 とはいえ、例えば、弁護士が裁判所に行くのは何をしにいくのでしょうか、ダンプカーが工事現場に行くのは何をしにいくのでしょうか、舛添前知事がホテル三日月に行くのは何をしに行くのでしょうか。
 最後の1つは別として、それぞれの属性・特性をもった人物、組織、機械などが、それぞれが活躍できる場に行く目的は、自ずと知れてきます。
 板前さんがデパートに行く場合はいろんな目的が考えられますが、平日の朝早く築地市場に行く目的は1つくらいしか考えられません。

 今回の中国軍艦は、カテゴリーとして「情報収集艦」に分類されるようです。日本の海上自衛隊の航空機の行動やレーダー能力などを調査していたのであれば、読んで字のごとく「情報収集」をしていたのでしょう。
 もし、「情報収集」を目的に通航していたのであれば「平和、秩序又は安全を害する通航」として、条約違反になりそうです。
 この場合、「領海」も日本国内であることから日本の法律の1つである「領海等における外国船舶の航行に関する法律」が適用されるのですが、この法律に基づいて立ち入り検査や勧告をしようにも、中国の軍艦は既にどこかに行ってしまっている以上、実効性がありません。
 ではどうするんだ?となるわけですが、やはり、現代社会では「外交」ということになるわけです。

 ここからは私見となるのですが、古今東西、「武力の行使」や「武力による威嚇」は「外交」の先にあるものであったことは幾多の歴史が語っているところ、「武力」の存在を前提とする「交渉」もまた「外交」なわけです。
 現行憲法では「武力」すら存在しない建前になっておりますので、日本では「武力」の存在を前提とする「交渉」はできません。
 これに対し、相手方は「武力」の存在を前提とする「交渉」を行ってくるわけですから、この時点で対等な「外交」など求めるべくもないことになります。
 憲法9条改正が是か非かは別として、「外交」の在り方について考えていかなければならないことを想起させるニュースでした。