外国人に対し「差別的な発言」を行うことを抑制するための法律、通称、「ヘイトスピーチ対策法」が先月24日に成立し、さっそく、川崎市が6月5日にでもを予定していた団体に対し、公園使用の許可を出さない決定をしたことがニュースになっています。
 どうやら、この団体、これまでにも在日コリアンの排除を訴えて「差別的な発言」を繰り返していたようで、川崎市は過去のこのような言動に鑑みて公園使用を認めなかったようです。

 この「ヘイトスピーチ対策法」ですが、何だかいろんな団体や識者を名乗る方々がああだ、こうだと口角を飛ばしているようなので、本コラムでも一度は取り上げてみたいと思います。
 まず、この法律が法案として提出された際、「我が国においては、近年、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、適法に居住するその出身者又はその子孫を、我が国の地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動が行われ」ており、「こうした事態をこのまま看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしても、ふさわしいものではない」ので、「不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進すべく、この法律を制定する」といった立法目的が発表されていました。
 ”近年の本邦の域外にある国又は地域の出身に対する差別的言動”というのは、「近年」において、日本人によるオーストラリア人やベトナム人、ペルー人やフランス人への差別が問題になったなど聞いたことがありませんので、要するに在日朝鮮人や在日韓国人あたりに対する差別にフォーカスしているのでしょう。

「差別的な発言」とは

 まず、この法律は、「差別的な発言」について、

「専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するものに対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」

と定義しています。
 すなわち、①外国出身者(またはその子孫)であって、②適法に日本に住んでいる者に対し、③日本人がこの人たちへの差別を増加するように、④外国出身者(またはその子孫)生命や身体に危険を及ぼすような発言したりして、外国出身者(またはその子孫)であることを理由に社会から排除する不当な発言、としています。
 そして、このような「差別的な発言」がなくなるように、「国や地方公共団体(都道府県や市町村など)」は様々な取り組みに関する施策を実施しなければならないし、教育もしなければならないし、国民にこのような施策を広めていかなければならない、と規定しました。

ヘイトスピーチ対策法には罰則がない?

 この法律が規定しているのは、ここまでです。
 あれ?と思われた方もいるかもしれませんが、この法律は「差別的な発言」を禁止もしていませんし、「差別的な発言」をしたことに対する罰則もありません。
 ただ、「(国民は)差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない」と規定するのみです。
 要するに、この法律は、「差別的な発言とはこういうものなので、国民は、国や地方公共団体が実施する差別のない世の中にするための施策に協力すること」としか規定しておらず、具体的なことは何も決まっていないということです。

 こういった点や、立法過程で議論された点をとらえて、団体や識者を名乗る方々がああだこうだと述べています。
 これらのご意見を僭越ながら勝手にまとめると、

  • 「外国出身者」としてしまったら、アイヌや沖縄など、日本人だけど民族が違う(とされている)人への差別を防止できない
  • 「適法に日本に住んでいる者」に限るのはおかしい
  • 「差別的な発言」だけではなく「差別的な取扱い」、例えば学校への入学資格や就職資格などの制限も禁止せよ
  • 公園などの公共施設について、「差別的な発言」が行われることが明らかな場合は禁止できるような条文を設けろ

ということになります。

 しかしながら、「差別的な発言」も、一つの「表現」であることには変わらず、実は、「ヘイトスピーチ」の問題は、憲法上のとても重要な問題を孕んでくることになるのです。

次回:ヘイトスピーチ対策法に”酔っぱらう”者たち② 憲法の”腫れ物”「表現の自由」
(近日公開予定)