埼玉県朝霞市で当時中学1年だった少女が行方不明となり2年ぶりに東京都中野区で発見された事件で、容疑者が少女の両親にあてた「さがさないで」といったメモなどについて、「失踪マニュアル」などの書籍やインターネットなどを参考にしていた可能性があるとのニュースが話題をよんでいます。

 捜査関係者の話によると、こういったマニュアルは、借金など何らかの理由で世間から身を隠したい、失踪したいと考える人向けのもので、警察の捜索を受けないためのノウハウなどが記載されているとのことです。
 例えば、身を隠す際に近親者に対し、「必ず帰ってくることを強調した手紙を書く」、「手紙には必ず日付や氏名を書く」といったノウハウが書いてあるとのことです。
 おそらく容疑者は、このようなノウハウを悪用し、メモを見た少女の両親が「娘は自ら失踪した」と思うように仕組んだのでしょう。

 ちなみに、なお、「失踪」とは、法的には、「生死が7年間明らかでないとき」や「戦争に参加したり、沈没した船の中にいたり、その他、死んでしまうような事故に遭った者の生死が、それぞれ、戦争が終わった後、船が沈没した後、その他の死んでしまうような事故の危険が終わった後、1年間分らない場合」を言います(民法30条)。
 要するに、通常の場合は、「7年間、どこに行ったのか分らない場合」に「失踪」状態ということになるようです。

 では、こういった「失踪」をお手伝いするようなマニュアルは違法なのでしょうか。

 まず、民法上は、「失踪」に関する罰則(例えば、失踪を装ったり、失踪を勧めたりすることの罰則)はありませんので、特に違法ということはなさそうです。
 もっとも、「失踪マニュアル」などには、「今、住んでいる市町村(区)の役所に転出届を出して、その後、どこにも転入届を出さなければ失踪できる」などといったアドバイスもあるようです。
 しかし、住民基本台帳法22条等は、引越しした場合は14日以内に転入手続きをしなければならないと定めていますので(同法は5万円の過料(行政罰)を定めています)、上記のアドバイスは、この法律に違反することを勧めることになりそうです。

 このように、「失踪のアドバイス」自体は違法ではないとしても、その手段によっては、法律違反を教唆することにもなりかねず、その意味では「違法」となる場合もあるかもしれません。

 なお、法律違反を教唆するような「失踪のアドバイス」が載っている書籍の著者や出版社の責任ですが、「法律違反を教唆する」とは、個別・具体的な人物に対して「法律違反を教唆する」ことを意味すると考えられています。
 要するに、特定の「誰か」に対して「法律違反を教唆する」ことではじめて「違法」となると考えられていますので、誰が読むのか全くわからないような書籍に「失踪のアドバイス」を載せたとしても、直ちに違法であるということにはならないということです。

 とはいえ、今回のように悪用されること間違いなしの「失踪マニュアル」は、今後、こういった弊害が続くなら何らかの方法で取り締まる必要性もでてくることでしょう。
 個人的には、最低限、都道府県や市町村が「青少年の育成にとって有害な本」として指定できる「有害図書」に指定し、成人しか買えない、という”しばり”が必要かと思います。