先日、人工知能(AI)が執筆した短編小説をSF短編小説の登竜門とされる「星新一賞」に応募したところ、一次選考を通過したといったニュースがありました。
 これは、公立はこだて未来大学の松原仁教授が行っている人工知能(AI)をつかってSF小説を生み出すことを目指したプロジェクトの一環として応募したものだそうで、4年前から進められているとのことです。

 最近、ソフトバンクのペッパー君やプロにも勝てる囲碁ロボットなどロボットの話題が事欠きませんが、人工知能(AI)が小説を書けるというのはすごい話です。
 毎日、裁判用の書面の起案や、法律雑誌の記事などの執筆に追われている当職としても、是非、お任せしたいくらいです。

 ところで、法律家という職業は、いつも余計なことを心配するのですが、こういった小説の著作権は誰にあるのかという点が気になりました。

 そもそも、「著作権」とは何かについて難しく言うと、「思想・感情を創作的に表現した著作物を排他的に支配する財産的な権利」ということになります。
 簡単に言うと、自分の考えや思っていることなどを絵や音楽や小説などで表現し、それらのものを売ったり貸したりコピーしたりする権利ということです。

 ここで、著作権を発生させるために重要なのは「自分の考えや思っていること」を「表現すること」なのですが、先ほどのニュースによると、この人工知能(AI)は、小説を書くために必要となる「ストーリーを考え出す能力」と「ストーリーに沿って文章を書く能力」のうち前者についてはまだ獲得しておらず、今回の場合も人間が担当したとのことです。
 ここで「ストーリーを考え出す」ということは、「こういう話を書きたい」という「考えや思い」であり、「ストーリーに沿って文章を書く」ということは、「文章を書く」という「表現」を意味することから、今回の場合、人間と人工知能(AI)の分業として考えるのが妥当ではないでしょうか。
 そうすると、著作権も人間と人工知能(AI)の両方にある、と考えることができます(はたして、人工知能(AI)に「人権」が認められるかという面倒な議論はすっとばします)。
 要するに、人間が「脚本(ストーリーを考え出す)」を担当し、人工知能(AI)が「執筆(ストーリーに沿って文章を書く)」を担当し、一つの著作物を作成したので、著作権も両方にある、ということです。

 実は、実世界でも、例えば、著名な漫画「MASTERキートン」は、勝鹿北星さんらが脚本を担当し浦沢直樹さんが作画を担当していますし、「ゴルゴ13」も数人の脚本家とさいとう・たかをさんとで分業しています。
 これも、「ストーリーを考え出す」人と、「ストーリーに沿って文章(漫画)を書く」人が分業している例であり、結構、こういった話は多いようです。
 ただ、こういった場合、印税をめぐって紛争が発生したりするようです。
 まぁ、人工知能(AI)が報酬を要求し始めたら、それこそSFの世界になってしまいますが、それはまだ先の話でしょう。